対人・対物はなぜ「無制限」が基本なのか|賠償額の実例から考える
自動車保険の対人・対物賠償は「無制限」が一般的です。なぜ上限を付けないほうがよいのか、実際の高額賠償判例と、無制限にしても保険料の差が小さい理由を解説します。
「無制限」という言葉に驚くかもしれません
自動車保険の対人・対物賠償の金額を選ぶ画面で、 「無制限」という選択肢を見て戸惑う方は少なくありません。
「そんな高額な事故、実際に起きるの?」というのが率直な疑問だと思います。 結論から言うと、起きています。しかも珍しくありません。
実際に認められた高額賠償
裁判で認められた損害賠償額には、次のようなものがあります。
| 判決 | 賠償額 |
|---|---|
| 横浜地裁(平成23年) | 約5億2,800万円 |
| 東京地裁(平成20年) | 約2億1,300万円 |
| バイク事故・後遺障害の事例 | 約1億500万円 |
被害者が若く、重い後遺障害が残った場合、 将来にわたる介護費用や逸失利益(本来得られたはずの収入)が積み上がり、 賠償額は非常に大きくなります。
自賠責保険だけでは足りません
自賠責保険(強制保険)にも上限があります。
| 損害の種類 | 自賠責の上限 |
|---|---|
| 死亡 | 3,000万円 |
| 後遺障害(最重度) | 4,000万円 |
| 傷害 | 120万円 |
先ほどの5億円を超える判例と比べると、 自賠責だけでは大きく不足することが分かります。
不足分は、任意保険の対人賠償に入っていなければすべて自己負担です。
対物も無制限が一般的です
対物事故でも高額化するケースがあります。
- 積み荷のあるトラックに追突し、荷物ごと損害賠償
- 店舗や住宅に突っ込んで建物を損壊
- 電車の運行を止めてしまい、遅延損害を請求される
物損は「相手の車の修理代」だけとは限りません。 建物・設備・営業損害まで含むと、金額は想定を超えることがあります。
「無制限」でも保険料の差は大きくありません
ここが実務上、重要なポイントです。
対人・対物の保険金額を「無制限」にしても、 「3,000万円」や「1億円」に制限した場合と比べて、 保険料の差はそれほど大きくありません。
理由は、そもそも数千万円〜億単位の事故が発生する確率自体が低いためです。 保険会社にとって、上限を外すことによる負担増は限定的です。
つまり、 わずかな保険料差のために、上限を設定するメリットが薄い というのが一般的な考え方です。
それでも金額を選べる補償はあります
対人・対物とは違い、次の補償は金額設定で保険料に差が出やすい部分です。
- 人身傷害保険の保険金額
- 車両保険の金額・免責金額
こちらは家計とのバランスで選ぶ余地があります。
まとめ
- 対人・対物は、高額賠償の実例が存在するため無制限が一般的
- 自賠責の上限だけでは、重大事故の賠償額をカバーできない
- 無制限にしても保険料への影響は限定的
- 保険料を抑えたいなら、対人・対物より車両保険や免責金額で調整する方が現実的
補償全体の整理は対人・対物・人身傷害・搭乗者傷害の違いをご覧ください。
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